甲状腺の病気について

甲状腺の病気とは?
甲状腺ホルモンのバランスが崩れることで、様々なつらい症状が現れます。
甲状腺は喉仏の下にある小さな臓器ですが、その不調とは、ホルモンの異常による全身症状です。
「なんとなく、いつも調子が悪い状態」になることが多いため、病気と気づかなかったり、
更年期障害やうつ病、高コレステロール血症、認知症など他の病気と勘違いされることも多いです。
また、甲状腺の病気は、30代から60代の女性に多く見られます。

内分泌疾患について
甲状腺、下垂体、副甲状腺、副腎、膵臓、卵巣、精巣などが内分泌腺です。内分泌腺の病気を「内分泌疾患」と呼びます。内分泌腺は「ホルモン」という生体内の恒常性維持(=生きていくのに必要な体内の活動)に関わる微量物質を合成・分泌している臓器です。つまり「内分泌疾患」とは、「ホルモンの病気」と考えていただいても良いかもしれません。
甲状腺疾患について
甲状腺は、全身の細胞の代謝を活性化させる「甲状腺ホルモン」を分泌している臓器です。喉仏の下にあり、蝶が羽根を広げたような形をしています。小さくて柔らかい臓器なので、正常時は外から見ても分かりません。甲状腺ホルモンは過剰になってもいけませんし、不足してもいけません。適正な範囲にコントロールされている必要があります。甲状腺の病気は大きく3つに分けられます。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌される病状です。
バセドウ病は、身体の防御機能である「免疫」が自分自身を標的にしてしまうという自己免疫の代表的な病気です。男女の割合では、2:7位で女性の方が多い傾向にあります。日本では90%ほどが薬物治療で、抗甲状腺剤というお薬を使います。お薬を内服して2ヶ月間は2週間間隔で血液検査をして、副作用が生じていないかどうかをチェックする必要があります。お薬を1年半から2年位内服し、その後中止して、バセドウ病を再発しない患者さんは3割程度と考えられています。血中甲状腺ホルモンが高くなる病気には、その他に無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺過機能結節(プランマー病)、妊娠甲状腺亢進症など様々な病気があります。

- 主な症状
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いらいらする、疲れやすい、多汗、暑がり、胸がどきどきする、息切れ、手指や足が震える、食欲があるのに体重が減っていく、便通がゆるくなる、月経不順、甲状腺が腫れて大きくなる(甲状腺腫)、目が突出してくる、物が二重に見えたりなど。
- 検査方法
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血液検査にてTSH(甲状腺刺激ホルモン)、フリーT4(サイロキシン)、フリーT3(トリヨードサイロニン)の3項目を測定し、ホルモンの状況を確認します。バセドウ病に特異的な物質であるTSHレセプター抗体の測定することにより、95%以上の方で診断が可能です。
- 治療方法
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病状に応じて、以下のいずれかの方法で治療しますが、
日本ではほとんどが 1薬物治療で占められています。- 1 薬物治療
- 2 放射性ヨウ素治療
- 3 手術
甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺ホルモンの分泌量が低下した病状です。
日本では、甲状腺機能低下症をきたす最も頻度の高い病気は橋本病です。橋本病は、バセドウ病と同様に身体を守る免疫という働きが異常をきたし、自分の臓器に対して攻撃するという自己免疫疾患のひとつです。甲状腺にリンパ球が浸潤し慢性的な炎症を起こす病気であり、「慢性甲状腺炎」ともいいます。橋本病は成人女性の10~20人に1人といわれるほど、発症頻度の高い病気です。また、年齢を重ねるほどホルモンの異常をきたす可能性が高くなります。

- 主な症状
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疲れやすい、やる気が起こらない、皮膚が乾燥する、声がかすれる、髪の毛が抜ける、顔や手足がむくむ、寒がり、便秘がち、体重増加など。
- 検査方法
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血液検査にてTSH、フリーT4、フリーT3の3項目を測定し、ホルモンの状況を確認します。 サイログロブリン抗体、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体という甲状腺組織に対する自己抗体を測って診断します。
- 治療方法
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甲状腺機能が低下していれば、甲状腺ホルモン剤で補充療法を行います。
甲状腺腫瘍
甲状腺にできる「しこり」とか「できもの」をいいます。
甲状腺腫瘍には良性と悪性がありますが、診療において見つかるほとんどが良性です。良性腫瘍の場合、サイズが小さければ手術などの外科治療の必要はなく、経過を観察します。ただ、一部に悪性の腫瘍があり、これを判断するために細胞診(針付きの注射器で腫瘍を刺して細胞をとる検査)を行います。また、甲状腺の悪性腫瘍には、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫などがありますが、日本では悪性腫瘍の90%以上を乳頭がんが占めています。

- 主な症状
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ご自身で触ってわかるような「首のしこり」が代表的な症状です。
また、頚動脈エコー検査などの他の検査で発見されることも多くあります。
まれに、声がかすれたり、急激にしこりが大きくなることもあります。
- 検査方法
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血液検査にてTSH、フリーT4、フリーT3の3項目を測定し、ホルモンの状況を確認します。
サイログロブリン抗体、サイログロブリン、カルシトニンなどを測って、良悪の判断に役立てます。
- 治療方法
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良性であれば、経過観察となります。
悪性腫瘍のうち、最も頻度の多い乳頭がんの第一選択は手術で、比較的治りやすいがんです。
悪性リンパ腫では抗がん剤による薬物(化学)療法や放射線治療を行います。 非常に悪性度の高い「未分化がん」は、手術だけでなく化学療法や放射線治療などが試みられています。
甲状腺に腫瘍(しこり)がある場合の検査について
まずはエコー検査(超音波検査とも言います)を受けていただき、採血検査結果などを併せて判断します。
また、細胞診検査が必要な場合もあります。細胞診検査とは腫瘍を細い針で穿刺して細胞を採取し、さらに染色して病理医が顕微鏡で調べます。針の太さは採血針と同じで、痛みも同じくらいとお考え下さい。当院では診察室で超音波ガイド下に細胞診検査を行うことができ、小さな腫瘍でもより正確な診断が可能となっております。また、患者様の苦痛を減らすためにリクライニングチェアーに座った姿勢で検査を行います。
