日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・評議員
日本甲状腺学会認定専門医・評議員
医学博士
クリニックコラム

甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰にホルモンを合成・分泌し、代謝が過剰に活性化する病気です。
この疾患は様々な症状を引き起こし、生活に深刻な影響を与えることがあります。
特に、バセドウ病が原因となることが多く、早期の診断と治療が重要です。
この記事では、甲状腺機能亢進症の治療法について詳しく解説します。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰にホルモンを合成・分泌し、体全体の代謝が異常に活発になる状態です。
これにより、疲れやすさや動悸、体調不良などの症状が現れることがあります。
甲状腺ホルモンは体のエネルギー消費や心臓をはじめとする全身の臓器、精神面にも影響を与えるため、放置すると日常生活に大きな影響を与える恐れがあります。
体重減少や手の震えなどの複数の症状が見られる場合、早期の受診が推奨されます。
以下では、甲状腺機能亢進症の詳しい情報をお伝えします。
バセドウ病は甲状腺機能亢進症の主な原因の一つで、免疫の異常により甲状腺を刺激する物質が血液中に現れる病気です。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰そのものを指し、バセドウ病以外にも甲状腺のしこりや炎症などが原因となることもあります。
バセドウ病は甲状腺機能亢進症を引き起こしますが、甲状腺機能亢進症はそれ以外の原因も含む広い概念です。
診断には血液検査や画像検査が必要で、原因に応じた治療が求められます。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより、身体的・精神的にさまざまな症状が現れる病気です。
「最近、動悸が激しくなった」「異常に汗をかく」「体重が減少した」といった症状を感じる場合、この病気の兆候である可能性があります。
甲状腺機能亢進症には、自己免疫の異常や結節性疾患など多くの原因があり、それぞれの原因により症状や治療方法も異なります。
詳細については、以下でさらに説明します。
甲状腺機能亢進症の主な原因は、甲状腺が過剰にホルモンを分泌することです。
最も多い原因は「バセドウ病」という自己免疫疾患で、体が誤って甲状腺を刺激する物質を作り出します。
その結果、甲状腺がホルモンを多く分泌し、代謝が過剰に活発になります。
動悸や汗の増加などの症状が現れ、不安を感じることもあるでしょう。
その他の原因として、甲状腺にしこりができてホルモンを多く分泌する場合や、ウイルス感染による炎症などもあります。
症状や治療法は原因により異なるため、早期の診断が重要です。
甲状腺機能亢進症の治療法は、症状や原因、患者の年齢や健康状態を考慮して決定されます。
治療の主な目的は、甲状腺ホルモンの過剰な合成・分泌を抑え、病状を安定させることです。
適切な治療を受けることで、生活の質が向上するため、早期の診断と治療が重要です。
以下では、代表的な治療法について詳しく解説します。
甲状腺機能亢進症の治療には、薬物療法が一般的であり、多くの場合はまずこの方法が選ばれます。
薬物療法の目的は、過剰に分泌されている甲状腺ホルモンの量を正常に戻すことです。
主に使われるのは、抗甲状腺薬という薬で、甲状腺ホルモンの合成を抑える働きがあります。
具体的には、メチマゾール(メルカゾール®)やプロピルチオウラシル(チウラジール®、プロパジール®)などが処方されることが多いでしょう。
早い方では数週間で手の震えや動悸などの症状が和らぐことがあります。
ただし、薬の効果には個人差があり、特に処方開始2~3か月間は副作用の頻度も高いため、定期的な血液検査や診察が欠かせません。
薬物療法は根本的な治療ではありませんが、多くの方が元の体調を取り戻し、日常生活を送りやすくする大切な手段です。
放射性ヨウ素治療は、内服薬が効きにくい場合や、副作用のために使えない場合、内服終了後の再発が多い場合に選ばれる治療法です。
放射性ヨウ素を服用(カプセルを内服)することで、腸から吸収された放射性ヨウ素が甲状腺に集まります。これにより、甲状腺での過剰な甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑えることができます。
この治療法の利点は、身体への負担が少なく、外来で治療可能な場合が多いことです。
薬を長期間服用するのが不安な方にとっても、根本的な改善が期待できる選択肢とも言えます。
ただし、妊娠中や授乳中の方には適応できません。治療後は定期的な(当初は1か月毎の)血液検査を行い、場合によってはメルカゾール/チウラジールの内服再開が必要となることもあります。
放射性ヨウ素治療の後、約1年間は甲状腺機能の変動が大きく、定期的な通院・検査が大切です。
甲状腺機能亢進症において、手術が必要となるのは、内服薬や放射性ヨウ素治療が効果を示さない場合や、甲状腺が大きくなりすぎて他の治療法では改善の見込みの低い場合、また、呼吸や飲み込みに違和感や支障をきたす場合です。
特に甲状腺が大きく腫れ、のどに圧迫感を感じる場合は注意が必要です。
手術では、腫れた甲状腺のほとんどの部分、または全部を取り除きます。
以前は甲状腺のほとんどの部分を切除する亜全摘術という方法が主流でしたが、最近では甲状腺全部を切除する全摘術が多くなされるようになってきました。
手術後はホルモン不足を補うため、定期的な血液検査と甲状腺ホルモン剤の服用が必要です。
手術の適応については、甲状腺外科専門医の総合的な判断が必要です。
手術には術後に声がかすれるリスクや、血中カルシウムが低くなることがありますが、経験豊富な外科医による手術ではそうしたリスクを最小限に抑えることができます。
手術療法は、他の治療法が無効な場合に有力な選択肢です。
甲状腺機能亢進症を持っている方は、日常生活での注意点を把握し対策することも重要です。
病状の安定を図り、再発や悪化を防ぐためには、ストレスや過労を避け、禁煙をはじめとする生活習慣の見直しが必要です。
ここからは、生活習慣で気を付ける点や運動と食事のバランスについて解説していきます。
甲状腺機能亢進症のコントロールがまだついていない方は、日常生活で体に負担をかけないよう心がけることが大切です。
甲状腺ホルモンが多く分泌されることで、心臓への負担やエネルギー消費が増し、普段よりも疲れやすくなることがあります。
少し動いただけで息切れや動悸を感じるときは無理をせず、十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけることが重要です。
ストレスは症状を悪化させるため、リラックスできる時間を意識的に取ることも有効でしょう。
また、体の代謝が活発になっているので、水分補給をしっかり行い、脱水を防ぐことも重要です。
アルコールやカフェインの摂りすぎにも注意しましょう。
仕事をなさっている場合は、上司と相談して仕事量の軽減や、一時的な休職なども必要なことがあります。いずれにしても体調の悪化を感じた場合は、無理せず早めに休息をとることが大切です。
慢性期においては、自分の体重や便通の頻度、食事量、運動習慣などを日々記録することで、異変に早く気づける場合もあります。
最後に特に強調したい点は禁煙です。喫煙はバセドウ病の治療に有害で、お薬終了後の再燃にも影響すると考えられています。
甲状腺機能亢進症の方にとって、運動と食事のバランスは重要です。
体が普段より多くのエネルギーを消費しているため、無理な運動や偏った食事は体調を悪化させる可能性があります。
甲状腺機能が改善して日が浅い時期は、軽いウォーキングやストレッチなど、負担の少ない運動を心がけ、体調が安定しているときに無理なく行いましょう。
食事面では、たんぱく質やビタミン、カルシウムなどのミネラルをバランスよく摂取し、特に治療初期には消化の良い食事を選ぶことが大切です。
また、ヨウ素を多く含む昆布や昆布だし、ひじきなどの海藻類の摂取は控えめにする必要があります。
また、イソジンうがい薬などの茶色いうがい薬にはヨウ素が豊富に含まれており、粘膜からも吸収されます。ですので、ウイルス感染対策などでうがい薬を使用する際は、それ以外のものを使用しましょう。
運動と食事を適切に調整することで、体調を維持し、日常生活をより快適に過ごすことができます。
甲状腺機能亢進症は、心臓をはじめとする全身の臓器や体重、精神面にまで影響を与える可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
主な症状としては動悸や息切れ、体重減少、多汗、暑がり、手の震え、イライラする、食欲亢進、軟便・下痢などがあり、これらは放置すると更なる健康リスクを招く恐れがあります。
診断には血液検査や画像検査が必要で、治療法には内服薬、放射性ヨウ素治療、手術などがあり、個別に最適な方法が選ばれます。
適切な治療を受けることで、症状を軽減し、日常生活を快適に過ごすことができるでしょう。
甲状腺の異常に気づいたら、早期の医療相談を行い、専門的なサポートを受けることが大切です。
この記事の監修者
プロフィール
甲状腺はとても小さな臓器でありながら、全身の臓器に影響をおよぼすホルモンを合成しています。そして、自己免疫疾患によりそのホルモンの異常をきたし、良性・悪性の腫瘤性病変も発生します。また、治療も薬物療法、放射線治療、手術と多彩で、内科医がその選択に大きく関わります。そうしたところに興味を覚え、専門とし研鑽を積んできました。今後は弊院スタッフとともに皆さまの健康に資するべく、高いレベルの内分泌代謝疾患診療を継続的に提供し、医療現場でのホスピタリティを培って社会に貢献してまいります。
経歴
平成8年 大阪医科大学(※1)卒業
平成8年~平成11年 名古屋大学附属病院、名古屋記念病院勤務
平成11年~ 大阪医科大学附属病院(※2)第一内科学教室入局
平成12年~平成14年 神甲会隈病院勤務
平成16年~平成24年 大阪医科大学附属病院(※2)第一内科 任期付助手→助教
平成24年5月 ひらいわクリニックを大阪府茨木市大手町に新規開院
令和6年8月 茨木市西中条町に移転拡張リニューアル
現在に至る
(※1)現 大阪医科薬科大学 (※2)現 大阪医科薬科大学病院
所属学会・認定医
日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・評議員
日本甲状腺学会認定専門医・評議員
医学博士
この記事の監修者
医師
プロフィール
患者さん一人ひとりの不安に寄り添い、わかりやすい説明と丁寧な診療を心がけています。 甲状腺の病気は、長く付き合っていく必要がある場合も少なくありません。 安心してご相談いただける、身近な専門クリニックを目指し、日々診療に取り組んでまいります。
経歴
平成27年 関西医科大学 卒業
平成27年~平成29年 大阪医科大学附属病院にて臨床研修
平成29年~ 大阪医科大学(※1)第一内科学教室入局
平成30年~令和2年 市立ひらかた病院 勤務
令和2年~令和6年 大阪医科大学附属病院(※2)勤務
令和6年4月 ひらいわクリニック 勤務
現在に至る
(※1)現 大阪医科薬科大学 (※2)現 大阪医科薬科大学病院
所属学会・認定医
内科認定医
臨床研修指導医
日本糖尿病学会専門医
日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
認定産業医
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