日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・評議員
日本甲状腺学会認定専門医・評議員
医学博士
クリニックコラム

ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となる必須栄養素で、不足だけでなく過剰でも甲状腺の働きに影響し得るとされています。
海藻を食べる習慣がある日本では、だしや海藻料理を通じて知らずに摂取量が増える日もある一方、極端な食事制限や偏った食生活で不足に傾く可能性もあります。
甲状腺は代謝をコントロールし、乳幼児~小児期の成長・発達を支える重要な臓器であり、その機能を守るにはヨウ素摂取量の適切な管理が欠かせません。
本記事では、ヨウ素と甲状腺の基本的な関係から高含有食品の注意点、推奨量と耐容上限量の目安まで体系的に整理します。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に欠かせない必須栄養素で、体内では主に甲状腺に取り込まれて利用されます。
甲状腺ホルモンは様々な臓器や組織の代謝をコントロールし、体温、心拍、発汗、腸管の動き、筋肉の収縮、脳の高次機能まで幅広い生理機能に関与し、分泌バランスが崩れると体調の異常をきたします。
以下で基礎的な項目について詳しく解説します。
甲状腺ホルモンは全身の細胞に作用し、エネルギー産生を高めて基礎代謝をコントロールするとされています。
体温維持や心拍数、消化管機能、脳や筋肉の働きにも関与するため、その異常は日常の不調として現れます。
甲状腺ホルモンの不足では倦怠感や冷え、むくみ、便秘などがみられることがあり、過剰では動悸や息切れ、体重減少、落ち着きにくさなどが生じることがあります。
材料となるヨウ素の摂取が極端に不足したり、過剰になるとホルモン合成に影響することがあります。
日本では昆布やわかめなどの海藻類を日常的に摂取する食文化があり、ヨウ素摂取量は個人差が大きいとされています。
だしや加工品にも多量のヨウ素が含まれており、食品成分表でも昆布類は高含有食品に分類されています。
日本人は長年の食習慣の中でヨウ素過剰摂取に適応していると考えられますが、甲状腺疾患がある場合には注意が必要でしょう。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの主要構成要素であり、不足すると合成が滞る可能性があります。
その結果、甲状腺腫や甲状腺機能低下症の一因になるとされています。
日本では重度の不足はほとんどないと考えられますが、一方、世界の国々の中にはヨウ素摂取不足の地域もあります。
ヨウ素が不足すると、体は甲状腺ホルモンを補おうとして甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を高め、甲状腺が腫大します。
これがヨウ素摂取不足地域での甲状腺腫の一因です。
甲状腺ホルモン合成が十分でない状態が続けば代謝が低下し、倦怠感や冷え、むくみなどの症状が現れます。
一方で、過剰摂取でも一時的にホルモン合成が抑制されることが知られており、適量を摂取することが求められます。
昆布をはじめ海藻類はヨウ素を多く含みますが、習慣的に摂り過ぎると甲状腺機能に影響する可能性があります。
日本では海藻を日常的に食べるうえ、だし・加工食品・外食・健康目的の濃縮エキスなどで摂取源が重なりやすく、気付かないうちに耐容上限量を超えることもあるでしょう。
過剰摂取の影響と具体例を以下で詳しく解説します。
ヨウ素を短期間に大量摂取すると、甲状腺が一時的にホルモン合成を抑える反応が起こることがあり、Wolff-Chaikoff効果として知られています。
多くは数日から数週間で適応して回復するとされますが、過剰摂取が慢性化すると甲状腺ホルモン合成が低下し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)上昇や甲状腺機能低下症につながります。
昆布だしを濃くとる習慣、根昆布水の常用(民間療法の一種)、ヨウ素入りサプリの併用などで総量が増えやすい点には注意が必要です。
高齢者や、既に甲状腺疾患のある方は影響を受けやすい可能性があるため、継続的な大量摂取は控え、気になる症状があれば医療機関に相談してください。
根昆布を水に漬けた飲料(根昆布水)やヨウ素を含むサプリメントを継続的に摂取した結果、ヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能低下が報告されています。
濃縮抽出タイプは少量でも高濃度になり得るうえ、複数製品を併用すると総摂取量が把握しにくくなります。
昆布だしや海藻食品に加え、健康目的の製品を重ねて使用することで耐容上限量を超える可能性もあります。
妊娠中や授乳中、甲状腺疾患の治療中は、民間療法やサプリメント(特に海外製)服用開始前に医師や薬剤師へ相談することが望ましいとされています。
橋本病やバセドウ病では、ヨウ素摂取量の管理が検査や治療で求められることがあります。
日本はヨウ素摂取量が比較的多い食文化であるため、甲状腺疾患のある方では注意が必要な場合があります。
ここでは代表的な疾患ごとの考え方を整理します。
橋本病では、ヨウ素を過剰に摂取すると甲状腺機能低下を助長する可能性が指摘されています。
そのため、昆布だしを極端に濃くする、昆布製品を日常的に多量摂取するなどの習慣は控えるのが望ましいでしょう。
ただし、海藻を摂取してはいけないわけではなく、常識的な範囲であれば問題ありません。
だしや加工食品にもヨウ素が含まれるため、検査値や症状、服薬状況に応じて主治医の指示に従うことが重要です。
バセドウ病の放射性ヨウ素内用療法やアイソトープ検査では、一定期間、ヨウ素摂取を控えるよう指示されます。
甲状腺はヨウ素を取り込む性質があるため、血中のヨウ素が高いと治療効果や検査精度に影響します。
制限期間や具体的な食品の範囲は検査や治療ごとに異なるため、主治医の指示に従うことが大切です。
サプリメントやイソジンうがい薬などの使用歴も事前に伝えるようにしてください。
ヨウ素制限食では、昆布やひじき、わかめなどの海藻類や昆布だしを使用した食品を避けることが基本とされています。
一方、白米やパン、野菜、果物、肉類などは比較的ヨウ素が少ない食品とされています。
ただし加工食品や外食では原材料が分かりにくく、海藻エキスやだしが使用されている場合もあります。
原材料表示を確認しながら食品を選び、必要に応じて医師や管理栄養士の指導を受けることが望ましいでしょう。
ヨウ素含有量が多い食品と注意点を以下で詳しく解説します。
海藻類はヨウ素を多く含みますが、種類と加工状態で差が大きい点に注意しましょう。
食品成分表では昆布類は突出して高く、ひじきが続き、わかめ類も野菜より高い水準が示されています。

参考元:日本食品標準成分表2010よりヨウ素含有量
ヨウ素は海藻以外にも、魚介類や貝類、海藻由来の食品原料を使う加工品などからも摂取されます。
例えば魚や貝のだし、練り製品、缶詰や干物、海藻を原料にした寒天などは、食卓で見落としやすい摂取源になり得ます。
また、海藻由来の増粘安定剤を含む加工食品もあり、製品によっては摂取量に影響する場合があるでしょう。
海藻を控えているつもりでも別の食品で積み上がる可能性があるため、原材料表示や摂取頻度を確認し、食事全体での総量を意識する姿勢が重要です。
ヨウ素は甲状腺の働きに不可欠ですが、摂取量が極端に偏ることは望ましくありません。
日本の食文化では摂取過剰になりやすいので注意が必要です。
また、食品以外にもイソジンうがい薬では、うがいの時に粘膜からヨウ素を吸収しますし、ヨウ素(ヨード)造影剤を使用した画像検査などもあります。
過不足のない状態を保つための目安と注意点について、以下で詳しく解説します。
日本人の食事摂取基準では、18歳以上の成人のヨウ素推奨量は1日130µg、耐容上限量は3,000µgと示されています。妊婦・授乳婦では付加量が設定され、耐容上限量は2,000µg/日です。
推奨量は健康維持に必要な目安であり、上限量は長期的に超えると健康被害のリスクが高まる可能性を考慮した値です。
昆布や昆布だしは少量でも高濃度のヨウ素を含むため、日常的に多用すると摂取量が増えやすい傾向があります。
不足も過剰も甲状腺機能に影響するとされるため、連日の大量摂取は避け、食事のバランスを意識することが大切でしょう。
ヨウ素は食品だけでなく、ポビドンヨードを含むうがい薬(イソジンうがい薬)や消毒薬、医療用のヨウ素(ヨード)造影剤などからも体内に取り込まれます。
使用頻度や投与量によって、血中ヨウ素濃度や甲状腺機能に影響を及ぼす場合があると報告されています。
風邪予防などで長期間うがい薬を使用する習慣がある場合は、イソジンうがい薬以外を使用することが望ましいでしょう。
甲状腺疾患の既往がある方は、検査や治療前に医師へ申告し、指示に従いましょう。
甲状腺疾患は初期段階では症状が目立たないことがあり、血液検査で偶然発見されることも少なくありません。
違和感が続く場合や健診で甲状腺腫(甲状腺の腫れ)を指摘された場合には、早めに医療機関を受診することが望ましいでしょう。
食事面では、海藻や魚介類だけに偏らず、主食・主菜・副菜を組み合わせた基本的な食事構成を心がけることが重要です。
特定の食品に依存せず、日々のバランスを整えることが、安定した甲状腺機能の維持につながります。
ヨウ素は甲状腺ホルモン合成に不可欠ですが、日本の食文化では海藻や昆布だしの摂取のため、ヨウ素過剰になりやすい傾向があります。
推奨量と耐容上限量を理解し、昆布や海藻の摂取頻度と量を調整することが基本となります。
さらに、イソジンうがい薬やヨード造影剤など食品以外の経路もあります。
極端な制限や過剰摂取は避け、必要に応じて医師と相談しながら適切な摂取バランスを保つことが、安定した甲状腺機能の維持につながります。
この記事の監修者
プロフィール
甲状腺はとても小さな臓器でありながら、全身の臓器に影響をおよぼすホルモンを合成しています。そして、自己免疫疾患によりそのホルモンの異常をきたし、良性・悪性の腫瘤性病変も発生します。また、治療も薬物療法、放射線治療、手術と多彩で、内科医がその選択に大きく関わります。そうしたところに興味を覚え、専門とし研鑽を積んできました。今後は弊院スタッフとともに皆さまの健康に資するべく、高いレベルの内分泌代謝疾患診療を継続的に提供し、医療現場でのホスピタリティを培って社会に貢献してまいります。
経歴
平成8年 大阪医科大学(※1)卒業
平成8年~平成11年 名古屋大学附属病院、名古屋記念病院勤務
平成11年~ 大阪医科大学附属病院(※2)第一内科学教室入局
平成12年~平成14年 神甲会隈病院勤務
平成16年~平成24年 大阪医科大学附属病院(※2)第一内科 任期付助手→助教
平成24年5月 ひらいわクリニックを大阪府茨木市大手町に新規開院
令和6年8月 茨木市西中条町に移転拡張リニューアル
現在に至る
(※1)現 大阪医科薬科大学 (※2)現 大阪医科薬科大学病院
所属学会・認定医
日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・評議員
日本甲状腺学会認定専門医・評議員
医学博士
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