クリニックコラム

公開日 2026.04.15 更新日 2026.04.15

原発性副甲状腺機能亢進症とは?その原因、検査、治療法まで徹底解説

原発性副甲状腺機能亢進症は、健康診断で血中カルシウム値の異常をきっかけに見つかることがあります。また、骨や腎臓、心身の不調につながる病気でもあります。

 

本コラムでは、副甲状腺ホルモン(PTH)とカルシウム代謝の関係、現れやすい症状、原因となる病変の違い、病院で行う検査、治療法と手術の適応、術後の注意点までを整理して解説します。

 

初めての方でも流れに沿って理解しやすいよう、要点を順番に確認できる構成でまとめています。

目次

原発性副甲状腺機能亢進症とはどのような病気か

原発性副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺でPTHが過剰に分泌され、血中カルシウムが高くなる病気です。

 

骨・腎臓・消化器・精神面などに影響することがあり、健診で見つかる例もあります。

 

ここでは、PTHとカルシウム代謝の関係、続発性(二次性)との違い、発症しやすい年齢層を順に解説します。

副甲状腺ホルモン(PTH)と血中カルシウムの関係

PTHは血中カルシウム濃度を一定に保つために働くホルモンで、骨・腎臓・腸管を通じた調整に関わります。

 

分泌が過剰になると、骨からのカルシウム放出や腎臓での再吸収が進み、血液中のカルシウムが高くなります。

 

高カルシウム血症が一定以上になると口渇、多飲・多尿や倦怠感、便秘、筋力低下などが現れることがあり、非常に高い場合には傾眠や意識障害をきたし、緊急を要することもあります。

原発性と続発性(二次性)の違い

原発性は副甲状腺そのものの異常によってPTHが過剰になる状態で、主な原因として腺腫や過形成、がんなどが挙げられます。

 

一方、続発性(二次性)は、慢性腎臓病やビタミンD不足など体の別の問題により副甲状腺が刺激され、結果としてPTHが増える状態です。

 

症状だけでは区別しにくく、原因が異なると検査結果の解釈や治療方針も変わります。

発症しやすい年齢層と性別による特徴

原発性副甲状腺機能亢進症の発症頻度は2000~3000人に1人で、中高年の女性に見つかることが多いとされますが、年齢や性別にかかわらず発症しうる病気で、健康診断で偶然見つかることもあります。

 

家族歴がある場合や、繰り返す尿路結石、骨量低下、血液検査でのカルシウム高値などの所見がある場合は、年齢や性別にかかわらず医療機関に相談することが望まれます。

原発性副甲状腺機能亢進症で現れる主な症状

原発性副甲状腺機能亢進症の症状は、高カルシウム血症の程度によって異なります。

 

軽症の高カルシウム血症では自覚症状が乏しい例もある一方で、中等症以上ではさまざまな症状が現れます。

尿路結石や骨粗鬆症などの骨・腎病変

原発性副甲状腺機能亢進症では、PTHの過剰分泌により骨からカルシウムが移動しやすくなり、骨量低下や骨粗鬆症につながることがあります。

 

その一方で、血液中に移動したカルシウムは尿中へ排出され、尿路結石を生じることがあります。

 

背部痛、胸~腰椎圧迫骨折、身長の短縮、背中やわき腹の強い痛み、血尿などを生じることがあり、加齢変化として見過ごさないことが重要です。

倦怠感・口渇・精神的な不調などの高カルシウム血症に伴う症状

中等度以上の高カルシウム血症(血中カルシウム濃度12mg/dL以上)により、倦怠感、口渇、多飲・多尿、食欲低下、便秘などの全身症状が現れることがあります。

 

日常では「疲れが抜けない」「喉が渇きやすい」といった変化として自覚されることもあります。

 

さらに、集中力低下やイライラなど精神面の不調につながる場合もあり、さまざまな症状が現れるのが特徴です。

無症状で健康診断により発見されるケース

原発性副甲状腺機能亢進症は、高カルシウム血症が軽度(血中カルシウム濃度 12mg/dL未満)の場合、自覚症状が乏しく、健康診断の血液検査を契機に発見されることがあります。

 

症状がないから問題ないと自己判断せず、健康診断などで高カルシウム血症を指摘された時点で専門医に相談しましょう。

原発性副甲状腺機能亢進症を引き起こす3つの原因

原発性副甲状腺機能亢進症の原因は、大きく「副甲状腺腺腫」、「副甲状腺過形成」、「副甲状腺がん」の3つに分けて考えられます。

 

中でも多くを占めるのは良性の副甲状腺腺腫で、副甲状腺過形成や副甲状腺がんは稀です。

 

ただし、原因によって治療方針や術後の見通しが変わるため、それぞれの特徴を整理して理解しておくことが大切です。

 

ここでは、各疾病のポイントを順に解説します。

原因の大部分を占める良性の「副甲状腺腺腫」

原発性の原因で最も多いのは、良性腫瘍の「副甲状腺腺腫」と呼ばれるものです。

 

通常は4つある副甲状腺のうち1つが大きくなり、PTHを自律的に過剰分泌します。

 

その結果、血中カルシウムが上がりやすく、尿路結石や骨量低下などを引き起こすことがあります。

 

画像検査で病変部位を確認し、手術で摘出する方針が検討されます。

複数の腺が腫大してしまう「副甲状腺過形成」

副甲状腺過形成は、1つではなく複数の副甲状腺が大きくなり、PTHを自律的に過剰分泌します。

 

腺腫と同様に血中カルシウム高値が続くことで骨量低下や腎への負担につながる場合があります。

 

病変が複数に及ぶため、手術では複数腺の摘出や副甲状腺の自家移植などを個別に検討します。

 

また、遺伝性疾患(多発内分泌腺腫症など)が背景にあることもあるため、家族歴や他臓器所見も含めて評価し、術後も定期的な経過観察が重要です。

極めて稀なケースである悪性の「副甲状腺がん」

副甲状腺がんは極めて稀とされています。

 

発症すると血中のPTHとカルシウムが著しく高くなることが多く、強い倦怠感や口渇、多尿、消化器症状、腎障害などを引き起こします。

 

血中カルシウム濃度が15mg/dL以上になると、意識障害や昏睡をきたすこともあり、緊急対応が必要となることもあります。

 

確定するには手術で摘出した検体の病理診断が必要で、治療は腫瘍の周辺組織もふくめて切除することが基本です。

 

再発の可能性もあるため、術後も血液検査や画像検査でのフォローが欠かせません。

病院で行う検査と原発性副甲状腺機能亢進症の診断

原発性副甲状腺機能亢進症の診断では、血液・尿検査で異常を確認したうえで、画像検査を組み合わせて原因となる副甲状腺病変を診断します。

 

症状がはっきりしない段階でも見つかることがあり、他の疾患との区別も重要です。

 

ここでは、診断に用いられる主な検査の役割を解説します。

血液検査と尿検査によるカルシウムや副甲状腺ホルモン(PTH)の確認

最初におこなうことは、血液検査でカルシウム値と副甲状腺ホルモン(PTH)を確認し、尿検査でカルシウム排泄率をみることです。

 

通常は血中カルシウム値が高いとPTHは抑えられますが、この病気では高カルシウム血症にもかかわらずPTHが不適切に高い、または正常上限付近を示すことがあります。

 

さらに尿中カルシウムの評価を加えることで、他疾患との鑑別や病態把握に役立ちます。

超音波やCT検査による画像診断

血液・尿検査で原発性副甲状腺機能亢進症が疑われた場合は、超音波やCT検査で副甲状腺病変の有無や位置を確認します。

 

超音波検査は被ばくがなく、繰り返し行える検査です。

 

一方、CTは深い位置の病変や周囲臓器との位置関係を把握しやすく、手術方法の検討にも役立ちます。

 

副甲状腺病変は小さく、場所も個人差が大きいため、単独で判断せず、ほかの画像検査と組み合わせて評価することが重要です。

病変の位置を特定するMIBIシンチグラフィ

MIBIシンチグラフィとは、異常な副甲状腺に集積しやすい放射性薬剤(この場合はMIBI=Methoxy-Isobutyl-Isonitrile)を静脈注射して、取り込まれた副甲状腺病変から放出されるガンマ線を専用の装置を用いて計測することで画像化する検査です。

 

超音波やCTだけでは特定しにくい場合にも役立ち、原発性副甲状腺機能亢進症の局在診断で用いられます。

 

最近では、SPECT(MIBIシンチグラフィのデータをコンピューターを用いて断層画像に再構成する検査)とCT検査を組み合わせたSPECT-CTを用いることにより、副甲状腺病変の局在診断精度を向上しています。

原発性副甲状腺機能亢進症の治療法と手術の適応

原発性副甲状腺機能亢進症の治療は、年齢や症状の有無、高カルシウム血症の程度、骨・腎臓への影響を踏まえて選択します。

 

根本治療が可能なのは手術だけですが、患者背景や病状によっては薬物療法や経過観察が適することもあります。

 

ここでは各治療法の特徴と、手術適応を判断する際の考え方を整理していきましょう。

根治を目指すための手術療法(副甲状腺摘出術)

根治を目指す治療は、副甲状腺ホルモンを過剰に分泌している病変を切除する副甲状腺摘出術です。

 

副甲状腺腺腫の場合は通常病変が1腺に限られるので、これを摘出します。

 

過形成の頻度は原発性副甲状腺機能亢進症全体の2~3%程度とされており、その中には遺伝性疾患(多発内分泌腺腫症など)が含まれています。そうした原因疾患の有無や、術前・術中にどの部位に腫大腺を認めるかなど、臨床的な条件によって術式は異なります。

薬物療法による血中カルシウム濃度のコントロール

さまざまな理由で手術が難しい場合には、症状の緩和や合併症予防を目的として、内科的治療が検討されます。

 

代表的な薬剤としては、ビスホスホネート製剤やデノスマブ、カルシウム受容体作動薬があります。前者2つは骨吸収抑制薬で骨粗鬆症の治療薬です。カルシウム受容体作動薬はカルシミメティクスとも言い、副甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑える薬剤です。

 

ただし、内科的治療の是非、治療をする場合どの薬剤を使い、どのように経過をフォローし、どういった場合には外科治療を再度検討するかなど、非常に専門的な判断が必要です。

手術を行わずに経過観察が選択される基準

無症状で高カルシウム血症が軽度、かつ骨・腎臓への明らかな障害がない場合には経過観察を選ぶことがあります。

 

その際は、血液検査や尿検査、腎機能、骨密度を定期的に確認し、悪化の兆候がないか継続して評価します。

 

経過観察は放置とは異なり、病状の変化があれば治療方針を見直す前提で行う管理方法です。

 

水分摂取や受診継続の重要性も含め、医師と方針を共有して進めることが大切です。

 

 

副甲状腺機能亢進症ガイドライン2026より抜粋

原発性副甲状腺機能亢進症の術後経過と日常生活

原発性副甲状腺機能亢進症の術後は、高カルシウム血症の改善を確認しつつ、合併症の有無や体調の変化を丁寧に見ていくことが重要です。

 

回復の進み方には個人差があり、手術後しばらくは生活面でも注意が必要になります。

手術後の合併症リスクと回復までの期間

手術直後の合併症としては頚部血種、反回神経麻痺、低カルシウム血症があります。

 

低カルシウム血症では手足や口まわりのしびれ、筋肉のつりなどが出る場合もあり、症状に応じて経口や静脈注射でのカルシウム製剤投与や活性型ビタミンD内服で対応します。

 

回復には個人差があるため、術後の診察で状態を確認しながら、無理のない範囲で日常生活へ戻していくことが大切です。

治療後の再発と定期検診の重要性

治療後に症状が落ち着いても、原因や病変の性質によっては再発の可能性があります。

 

特に過形成など複数腺が関与する場合や副甲状腺がんでは、術後も継続的なフォローが重要です。

 

また、定期検診では、血中カルシウム値や副甲状腺ホルモン(PTH)、腎機能、必要に応じて尿検査や画像検査を行います。

 

自覚症状がなくとも検査で異常が見つかることがあるため、受診間隔を自己判断で空けず、医師の指示に従ってフォローを続けることが大切です。

まとめ:原発性副甲状腺機能亢進症の原因と治療法

原発性副甲状腺機能亢進症は、PTHの過剰分泌によって高カルシウム血症を引き起こし、骨・腎臓の病変に加えて、倦怠感、口渇、精神的な不調など幅広い症状へつながりうる病気です。

 

原因は副甲状腺腺腫、過形成、まれな副甲状腺がんに分かれ、診断では血液・尿検査と画像検査を組み合わせて評価します。

 

根本治療は手術ですが、患者の背景やさまざまな理由で薬物療法や経過観察が選ばれる場合もあります。

 

術後も再発の可能性を踏まえて定期検診を続けることが必要です。

 

この記事の監修者

平岩 哲也

平岩 哲也

ひらいわクリニック

院長

プロフィール

甲状腺はとても小さな臓器でありながら、全身の臓器に影響をおよぼすホルモンを合成しています。そして、自己免疫疾患によりそのホルモンの異常をきたし、良性・悪性の腫瘤性病変も発生します。また、治療も薬物療法、放射線治療、手術と多彩で、内科医がその選択に大きく関わります。そうしたところに興味を覚え、専門とし研鑽を積んできました。今後は弊院スタッフとともに皆さまの健康に資するべく、高いレベルの内分泌代謝疾患診療を継続的に提供し、医療現場でのホスピタリティを培って社会に貢献してまいります。

経歴

平成8年 大阪医科大学(※1)卒業

平成8年~平成11年 名古屋大学附属病院、名古屋記念病院勤務

平成11年~ 大阪医科大学附属病院(※2)第一内科学教室入局

平成12年~平成14年 神甲会隈病院勤務

平成16年~平成24年 大阪医科大学附属病院(※2)第一内科 任期付助手→助教

平成24年5月 ひらいわクリニックを大阪府茨木市大手町に新規開院

令和6年8月 茨木市西中条町に移転拡張リニューアル

現在に至る

(※1)現 大阪医科薬科大学 (※2)現 大阪医科薬科大学病院

所属学会・認定医

日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・評議員

日本甲状腺学会認定専門医・評議員

医学博士

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