甲状腺とヨウ素
甲状腺は首の喉仏の下にある蝶々が羽を広げたような形をした臓器です。甲状腺ホルモンを合成、分泌して全身の細胞の代謝をコントロールしています。特に乳幼児期における神経系の発達・成長に重要な役割を果たすため、新生児の先天性疾患の検査として甲状腺機能のチェックが行われています。
甲状腺ホルモンを合成するためにはヨウ素(ヨードとも言います)が不可欠です。そのためヨウ素はヒトや哺乳類、両生類にとって成長や生命の維持に必須の元素とされています。ヨウ素は海藻類や魚貝類に含まれるため、海に面していない大陸の中央部ではヨウ素を摂取することが困難です。このため、アメリカ、スイス、中国などでは食塩にヨウ素を添加してヨウ素欠乏を予防しており、世界的にはヨウ素摂取不足に対する予防が大きな課題となっています。
一方、日本人の食生活でヨウ素が不足することはまずありません。逆に、海藻類の極端な過食や根昆布水の常用などによりヨウ素過剰摂取になることがあります。この場合、むくみ、倦怠感、意欲の低下、皮膚の乾燥、便秘などの甲状腺機能低下症状を来すことがあり注意が必要です。ひらいわクリニックにも、根昆布水の常用により甲状腺機能低下症を来した方が受診されることがあります。